マイクロ法人の作り方7ステップ|費用・節税・注意点まで解説

- マイクロ法人とは、社長1人だけで最小規模に運営する会社のこと。法律上の特別な制度名ではない。
- 合同会社での設立なら、登記の実費は約6万円で済む(株式会社は約20万円強)。
- 最大の狙いは、個人事業と法人の「二刀流」で社会保険料を大きく下げること。
- 赤字でも法人住民税の均等割(年約7万円)は毎年かかる。
- 事業実態がないと税務署・年金事務所に否認されるリスクがある。
私は株式会社CIVIQの代表として、役員報酬の設計から決算、社会保険の手続きまで自分で回してきました。この記事は、その一次情報をもとに書いています。ただし税務の最終判断は必ず顧問税理士に確認する前提です。
マイクロ法人とは?個人事業主・一般的な法人との違い

マイクロ法人とは、社長ひとりだけで従業員を雇わず、事業規模を最小限にして運営する会社のことです。法律に「マイクロ法人」という区分があるわけではなく、あくまで運営スタイルを指す呼び名です。
マイクロ法人の定義と特徴
特徴は3つ。社長1人、規模を広げる意図がない、そして多くは節税や社会保険料の最適化を目的にしている点です。
普通の会社は「事業を大きくする」ために作りますが、マイクロ法人は「手取りを守る」ために作る。ここが根本的に違います。
マイクロ法人と個人事業主の違い
一番の違いは、社会保険と税金のかかり方です。個人事業主は国民健康保険と国民年金、所得には累進の所得税がかかります。法人は社会保険(健康保険・厚生年金)に加入し、利益には法人税がかかります。
| 項目 | 個人事業主 | マイクロ法人 |
|---|---|---|
| 設立費用 | 0円(開業届のみ) | 合同会社 約6万円/株式会社 約20万円強 |
| 所得にかかる税 | 所得税(累進) | 法人税+役員報酬に所得税 |
| 社会保険 | 国民健康保険+国民年金 | 健康保険+厚生年金 |
| 赤字時の税負担 | なし(住民税均等割程度) | 法人住民税均等割 年約7万円 |
| 社会的信用 | 相対的に低い | 相対的に高い |
マイクロ法人と一般的な法人の違い
手続きや税制はまったく同じです。違うのは「規模と目的」だけ。従業員を雇い成長を目指すのが一般的な法人、社長1人で完結させ手取り最適化を狙うのがマイクロ法人です。
マイクロ法人を作るメリットとデメリット
マイクロ法人の最大のメリットは社会保険料の削減、最大のデメリットは赤字でも毎年約7万円の法人住民税がかかることです。

税負担・社会保険料を軽減できる仕組み
社会保険料は「報酬の額」で決まります。マイクロ法人の役員報酬を低く設定すれば、健康保険料と厚生年金保険料を最低ラインに抑えられます。
個人事業主のまま国民健康保険を払うと、所得が上がるほど保険料も上がります。ここを法人側の低い社会保険に切り替えるのが、二刀流の核心です。詳しい計算は後の章で出します。
経費の幅が広がり社会的信用度が上がる
法人にすると、自分への役員報酬、法人契約の生命保険、出張日当など、個人事業では認められにくい支出を経費にできる場面が増えます。
信用面も変わります。法人口座があると、取引先によっては「個人とは契約しない」という相手とも組める。私自身、法人化してから断られる場面が減りました。
設立・維持の費用と手間というデメリット
正直、ここはデメリットの方が重く感じる人が多いはずです。設立に実費がかかり、毎年の決算・申告作業が発生します。税理士に頼めば年間の顧問料もかかる。
個人事業なら確定申告を自分でやれても、法人決算は難易度が一段上がります。会計ソフトを入れても、初年度はかなり手こずりました。
赤字でも法人住民税がかかる点
利益がゼロでも、法人住民税の均等割は毎年発生します。この額は自治体によりますが、資本金1,000万円以下・従業員少数の小さな法人でおおむね年7万円前後です。
マイクロ法人の作り方を7ステップで解説
マイクロ法人は、会社形態の決定から税務署への届け出まで、7つのステップで設立できます。所要時間は書類がそろっていれば2〜3週間、難易度は「調べながらなら自力で可能」です。

- ステップ1:合同会社か株式会社かを決める
- ステップ2:会社の基本事項(商号・所在地・事業目的・資本金)を決める
- ステップ3:定款を作成する
- ステップ4:資本金を払い込む
- ステップ5:法務局に登記申請する
- ステップ6:法人口座を開設する
- ステップ7:年金事務所・税務署へ届け出る
前提として必要なのは、実印(個人の印鑑証明)、会社の代表印、資本金を入れる個人口座、そして事業目的を書けるだけの事業計画。この4つがあれば動き出せます。
合同会社か株式会社かを決める
マイクロ法人なら、私は合同会社を勧めます。設立費用が安く、決算公告の義務もないからです。
| 項目 | 合同会社 | 株式会社 |
|---|---|---|
| 登録免許税 | 6万円〜 | 15万円〜 |
| 定款認証手数料 | 不要(0円) | 3万〜5万円 |
| 定款収入印紙 | 電子定款なら0円 | 電子定款なら0円 |
| 実費合計の目安 | 約6万円 | 約20万円強 |
| 決算公告 | 不要 | 必要 |
「株式会社の方が信用される」という声はありますが、社長1人のマイクロ法人でそこまで差を感じたことはありません。この確認ができていれば、次に進めます。
定款作成・会社の基本事項を決める
定款には、商号・本店所在地・事業目的・資本金・社員(出資者)を書きます。ここでつまずきやすいのが「事業目的」です。
二刀流を狙うなら、個人事業とは別の事業を法人に置くのが基本。個人がコンサル、法人が資産運用や物販、といった分け方をします。目的の書き方ひとつが後の否認リスクに関わるので慎重に。
うまくいかないときは、法務局の商業登記の記載例や、freee・マネーフォワードの設立サービスの目的サンプルを参考にすると早いです。
登記申請から法人口座開設まで
定款ができたら資本金を代表者個人の口座に振り込み、その通帳コピーを添えて法務局に登記申請します。申請日が「会社設立日」になります。
登記が完了したら、登記事項証明書と印鑑証明書を取得。これを持って法人口座を開設します。ここが最大の関門で、実態が薄いと審査に落ちることがあります。
社会保険・税務署への届け出
設立後は、年金事務所へ社会保険の加入手続き(健康保険・厚生年金)を、税務署へ法人設立届出書などを提出します。社長1人でも社会保険は原則加入です。
税務署には法人設立届のほか、青色申告の承認申請書、給与支払事務所等の開設届出書、源泉所得税の納期の特例の申請書を出しておくと後がラク。「この手順で、社長1人の会社が動き出せる状態」になります。
マイクロ法人の設立費用と維持費用のシミュレーション

合同会社なら設立実費は約6万円、維持費は税理士なしで年約7万円〜、税理士ありで年約20万円〜が目安です。
設立にかかる初期費用の目安
| 項目 | 合同会社 | 株式会社 |
|---|---|---|
| 登録免許税 | 6万円〜 | 15万円〜 |
| 定款認証 | 0円 | 3万〜5万円 |
| 法人印鑑作成 | 3千〜1万円 | 3千〜1万円 |
| 登記簿・印鑑証明取得 | 千円台 | 千円台 |
| 合計目安 | 約6〜7万円 | 約20万円前後 |
毎年かかるランニングコスト
赤字でも消えないのが法人住民税の均等割、年約7万円。これに会計ソフト代(年1〜3万円程度)が乗ります。ここまでは税理士を使わなくても発生します。
| 項目 | 自分でやる場合 | 税理士に頼む場合 |
|---|---|---|
| 法人住民税均等割 | 約7万円 | 約7万円 |
| 会計ソフト | 年1〜3万円 | 年1〜3万円 |
| 税理士顧問+決算 | 0円 | 年15万円〜 |
| 年間合計目安 | 約8〜10万円 | 約22〜25万円〜 |
税理士に依頼する場合と自分でやる場合の比較
私の意見は明確です。売上が小さく取引もシンプルなマイクロ法人なら、初年度から無理に税理士を入れなくても回せます。会計ソフトで十分。
ただし、法人決算は個人の確定申告より格段に難しい。時間を金で買いたい人、消費税の判定が絡む人は、決算だけスポットで頼むのが折衷案です。
個人事業主とマイクロ法人の二刀流による節税の仕組み
二刀流とは、収入源を個人事業とマイクロ法人に分け、法人の役員報酬を低く抑えることで社会保険料を最低ラインにする節税スキームです。

二刀流で社会保険料を減らす計算例
仕組みはこうです。個人事業主のままだと国民健康保険料は所得連動で上がり続けます。ところが法人で社会保険に入ると、保険料は「役員報酬」で決まる。
そこで役員報酬を月額の最低ラインに設定し、残りの利益は個人事業側で得る。すると国民健康保険から外れ、法人側の低い社会保険料に切り替わります。個人事業の所得が大きい人ほど、この差は効きます。
役員報酬の最適な設定額と決め方
役員報酬は、社会保険料を抑えたいなら低め、法人の利益を圧縮したいなら高めが基本です。マイクロ法人で社会保険の最適化が目的なら、低めに寄せます。
注意点が2つ。役員報酬は原則、期首から3か月以内に決めたら1年間変えられません。そして低くしすぎると厚生年金の将来の受給額も下がる。私はここを毎期、顧問税理士と相談して決めています。
設立に適したタイミングと事業例
設立を検討する目安は、個人事業の所得が大きくなり社会保険料や所得税の負担が重くなってきたタイミングです。よく言われる基準に、所得800万円超や課税売上高1,000万円超があります。
法人側に置きやすいのは、不動産賃貸、株や資産の運用、物販、そして個人本業とは別ジャンルのコンサルなど。手離れがよく、実態を作りやすい事業が向きます。
税務署・年金事務所に否認されないための注意点と失敗事例
否認を防ぐ最大のポイントは、法人に「本物の事業実態」を持たせることです。ペーパーカンパニーと見なされた瞬間、節税効果はすべて崩れます。

租税回避と見なされないための事業実態の作り方
具体策はシンプルです。法人名義で契約・請求・入金を行い、法人の事業を個人事業とはっきり分ける。取引の記録を残し、法人独自の売上を作る。
「保険料を下げるためだけの器」に見えると危ない。私は法人側にも実際の取引先と請求書を積み上げ、事業として動いている証跡を必ず残しています。
後悔したケース・よくある失敗
よくある失敗は3つ。実態がなく否認された、赤字でも住民税が毎年出ていく負担を軽く見た、決算の手間に耐えられず放置した——このどれかです。
特に多いのが3つ目。設立はゴールではなく、そこから毎年の記帳と決算が始まります。ここを軽視すると「作らなければよかった」に直結します。
インボイス制度・消費税との関係
消費税は、原則として2期前の課税売上高が1,000万円以下なら免税になります。ただしインボイス発行事業者に登録すると、売上規模に関係なく消費税の納税義務が発生します。
取引先が課税事業者で、インボイスを求めてくるかどうかで判断が変わる。登録すべきかは、取引先の顔ぶれを見てから決めてください。
設立後のランニング業務とやめる際の手続き

